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皆さまこんにちは。
「ADPAニュースレター」2021年6月号(Vol.038)をお届けします。

今回のテーマは「アスリートとコーチング」です。

山縣亮太選手

山縣亮太
一昨日(2021.6.6)、鳥取市ヤマタスポーツパーク陸上競技場で開催された布勢スプリントの男子100メートル決勝で、山縣亮太選手が9秒95の日本新記録をマークし、優勝を果たしました。

山縣選手は、早くから9秒台を狙える選手として注目を浴びながらも他の選手に先を越され、さらに胸の病気や足の怪我などのアクシデントにも見舞われ、「もう続けられない」とくじけそうになったこともあるといいます。
これまでコーチを付けずに一人でトレーニングを積んできた山縣選手は、今年2月から高野大樹コーチをパートナーに迎えました。

高野コーチは「分かり合っていないと、コーチングは成立しない」と、コミュニケーションを重視するコーチ。

山縣選手が、足首や膝など右脚に故障が相次ぐ原因を一緒に考え、右股関節の動かし方の改善に取り組むなど、主に体の状態の相談役に徹し、山縣選手自らが判断して進んでいくスタイルを尊重しています。

日本新が出た瞬間、観客席で涙を流す高野コーチは、「僕が何かをやった感覚はない。一つ一つ課題を共有しながら解決していきたい」と語りました。

松山英樹選手

松山英樹
今年(2021年)4月11日、男子ゴルフのメジャー大会マスターズ・トーナメントで松山英樹選手が初優勝。日本男子初のメジャー大会制覇を成し遂げました。

松山英樹選手も、それまで特定のコーチをつけていませんでしたが、マスターズのわずか数ヶ月前にコーチをつけたことで話題になりました。
目澤秀憲コーチがその人です。

目澤秀憲コーチは、米国のゴルフに関する研究や教育機関であるTPI(タイトリスト・パフォーマンス・インスティテュート)で学び、日本人では数名しかいないと言われる最高位のレベル3を取得しています。

彼のインタビュー記事をまとめると、次のようなコーチングスタイルが見えてきます。

  • 松山選手の目指すプレースタイルを尊重し、とことんまで考え方を「傾聴」し、必要に応じてデータを活用して適切にアドバイスしていく
  • チェッカーではなく、松山選手の「鏡」になってあげるのが役割
  • コーチは選手ではないから、勝つ手段はわからないところなので、そこをコントロールするつもりはない
  • ひとつのアドバイスを、本当にすごくシンプルな言葉にして彼に伝えると、彼はひらめいた様子で練習を始める
  • 「選手を型にはめて可能性を狭めない」という信念
  • ティーチングとコーチングはまったく違う
松山選手は、目澤コーチについて次のように語っています。
  • 自分が過去やっていたこと、もう忘れちゃっていた部分を目澤さんはポンと開けてくれた

大坂なおみ選手

大坂なおみ
全仏オープンでの記者会見拒否や、大会棄権で波紋を呼んでいる大坂なおみ選手は、どのようなコーチをつけているのか
見ていきます。

大坂なおみ選手が、初めて全米・全豪とグランドスラム2連勝を飾った頃は、サーシャ・バインコーチが注目されました。
それまでツアー優勝が1度もない大坂なおみ選手が、世界ランク上位の選手を次々と打ち負かし、グランドスラム優勝まで成長した背景には、サーシャ・バインコーチの支えがあったことは間違いないでしょう。

実際とても相性が良く、大坂選手のポテンシャルを引き出し、上手に感情のコントロールをしていたように見えます。

しかし、大坂選手は全豪優勝後サーシャ・バインコーチを解任、後任のジャーメイン・ジェンキンスコーチとも成績が残せず解任、コーチ不在の間は父親のレオナルド・フランソワ氏が臨時コーチを務めました。

2019年12月から、ウィム・フィセッテコーチを迎え、2年ぶりに全米・全豪オープンでの優勝を果たしました。

ウィム・フィセッテコーチは優勝請負人と呼ばれる存在で、コーチング+ITを活用した練習や戦術を強みにしています。
「SAP」というアプリを使用して、徹底したデータ分析に基づく緻密なゲームプランを展開し、再び強いチームなおみを作り上げました。

アスリートのメンタルヘルス

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プレーの面では強さを発揮していた大坂なおみ選手ですが、今回の会見拒否、大会棄権をきっかけに、長い間うつ状態であったことを告白をしています。

メンタルヘルスの面ではどうであったのか、考えてみます。
現在のチームなおみのメンバーは、コーチのウィム・フィセッテ、フィジカルトレーナーの中村豊、ケアトレーナーの茂木奈津子、ヒッティングパートナーのKarue Sell。

以前は「自分のストレスや重荷で周りの人に迷惑を掛けたくない」という理由で、「全てを自分で背負っていた」という大坂なおみ選手。

今回のチームでは、「より心を開き、よく話し合った」「緊張や恐怖も正直に伝えた」と語り、合宿で絆を深め「彼らといると毎日が本当に楽しい」とメンタルの好調さを話していました。

それでもなお、本人が抱えるストレスは並大抵のものではなかったのでしょう。

彼女は現在23歳。一般の女性でいうと大学を卒業したばかりの年頃。
精神的な成熟度からすると、まだまだこれから社会的な経験を積んで自分らしさを作り上げていく年齢ではないでしょうか。

彼女の場合はトップアスリートとなり、多くのスポンサーの看板を背負い、さらに「女性アスリート」という側面、人種や国籍での難しい立場、抱えきれないほどの責任や負担があったことは想像できます。

過去の、コーチの解任理由について「成功よりも幸福感が大切だから」という記事を読んだことがあります。

チームスタッフが、強くなること、試合に勝つことを目的に招集されることは当然だと思います。
また、メンタルケアも当然行われるだろうと推測します。

しかし今回の件で、アスリート自身の「幸せ」や「生き方」、もっと言うと「人生そのもの」に寄り添ってあげるコーチはいるのかなぁ、いればもっと違っていたのかなぁ、と考えさせられました。

「アスリートセンタード・コーチング」という考え方も普及し始めましたが、スポーツ以外のところも注目され、影響力を持つアスリートには、さらにライフ・コーチングのようなコーチの必要性も感じています。
文責:相澤雅夫
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