ラーメン店での出来事
街で出会う親子の会話を耳にすると、胸の痛い内容が多く、とても残念な気持ちになります。
例_1
あるラーメン店で、若い夫婦と小さな女の子が入って来ました。
席に座ろうとした時、女の子は「怖い」と言います。
そのお店は会津地方ラーメンのチェーン店で、民芸品の唐人凧の絵(目をむき舌を出して険しい顔)が描かれています。
大人が見ればユーモラスに思えたり、本場の雰囲気が味わえるように感じるのですが、子供の目には怖く映るのでしょう。
母:「どうしたの?怖くないよ」
子:「怖いー」
母:「大丈夫。全然怖くないから」
子:「怖いよ、怖いよー」(泣)
その夫婦は、絵が見えない席に移動しますが、子供は店を出ようとドアに向かいます。
店を出たところで、母親に抱っこされてまた席に連れ戻されます。
店員がやってきて「大丈夫だよ、怖くないよ」と言いますが、子供はますます激しく泣きます。
仕方なく店を出ることになりますが、父親は「マジかよ」と、捨てゼリフを吐きます。
子供への影響
皆様は、この親や店員の言葉をどう感じるでしょうか?
コーチから見れば、最悪の声かけです。
子供の「怖い」という気持ちの表明に、「怖くないよ」と否定しているからです。
自分は怖くなくても、子供は「怖い」と感じています。
その気持ちを受け止めず、共感せず、否定すると、子供はもっと「怖い」気持ちになり、自分の味方になってもらえない「悲しい」気持ちなどがプラスされて、どんどん負の感情が増大します。
このような関わりを繰り返していくと、子供にはどんな影響があるでしょうか?
- 親への不信:「自分の気持ちを分かってくれない」など
- 自己不信「自分が間違っているのかも」「自分は弱い人間」など
- 消極的:自分の率直な気持ちを言えず、心を閉ざす
- 反抗的:言うことを聞かず反発する
コーチング的対応
では、この場面ではどうしたら良いでしょうか?
コーチングのスキルで言うと「承認」と「共感」です。
「怖いねー」と受け止め、共感してあげます。
その上で、次の行動も考えてみましょう。
◇ 安全の確保
「見えない所だとどうかな」「お父さんとお母さんの間に座るとどうなる」「お店から出れば大丈夫?」など、どうしたら怖くなくなるのか、程度を確かめる。
一緒に逃げても良いし、一緒に立ち向かっても良いし、大切なのは共感し一緒に行動することです。
◇ 視点の移動
「なんでベロ出してるのかなー、ラーメンが美味しすぎたのかなー」とか「ちょっとあのおじさんに、何を食べたのか聞いてくる」などと、(ユーモアを交えながら)観点を変える声かけをしてみる。
◇ 本人に選択させる
最終的にここでラーメンを食べるのか、別のお店に行くのか、冷静に判断できる環境や情報を与えて、本人に選択させます。
今は怖くても、自分でコントロールして選択した体験をさせることで、次にチャレンジできる機会が生まれます。
何よりも「自分の気持ちを理解してくれた」ことが勇気につながります。
コンビニ店での出来事
例_2
あるコンビニ店に男の子とお母さんが入って来ました。
子:「あ、アンパンマンのチョコだ」
母:「買わないよ」
この場面、皆様はどう感じるでしょうか?
子供は、買いたいとも欲しいとも言っていません。
私の印象は、「こんな所にアンパンマンがいたよ」と、大好きなアンパンマンを発見して、嬉しい気持ちをお母さんと共有したかっただけのように見えました。
そのお母さんは、子供の様子を見ることもせず、自分の買い物をしています。
子供の純粋な気持ちを受け止めず、ネガティブな思い込みの言葉と態度は、毒のように子供にダメージを与えます。
では、どのような声かけが良いでしょうか?
「本当だ、アンパンマンだ」「よく見つけたねー」「アンパンマンがニコニコしてるねー」
このように承認と共感をすることで、子供は満足します。
シャワーのように降り注がれる言葉
お店の床に寝転んで、「買ってくれなきゃ嫌だ」と泣き叫ぶ子供を、時々見かけることがあります。
その子は、その物が欲しいと言うよりは、自分の気持ち、自分の状態を分かって欲しい、という訴えであることとがほとんどです。
普段から、子供の気持ちを受け止め共感してあげないと、お店に行ってストレスが爆発してしまいます。
子を持つ親だけの話ではありませんが、特に子育て期にある父母の皆様は、普段自分が何気なくかけている言葉を、改めてチェックしてみることをお勧めします。
最低限、子供の発言を否定することは避け、承認、共感する言葉に変換することを心がけてください。
植物が毎日シャワーで水を浴びるように、親の声かけは、それが綺麗な水であっても毒のある水であっても、シャワーのように子供に降り注がれます。
Photo by (c)Tomo.Yun
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