AIはコーチングができるのか?

コーチング

AIはコーチングができるのか

私たちの日常にAIが浸透し、ビジネスや教育の現場でもAI導入が加速しています。

そんな中、「AIコーチング」と称するサービスも登場しています。
今回は「AIはコーチングができるのか?」というテーマで、私自身の体験と考察をもとにお話しします。

※ここで言う「AIコーチング」とは、学習支援や指導ツールではなく、対話を通じて自己理解や行動変容を促す、コミュニケーション型のコーチングを指します。

結論:現時点では、AIに本質的なコーチングは難しい

実際にいくつかのAIコーチングツールを試した結果、現時点ではAIが人に寄り添いながら行うコーチングは難しいと感じました。

その理由を5つの観点からご紹介します。

1. 非言語情報を認識できない

コーチング人間は、伝えたいことを言葉で表現できる割合が、1割未満だと言われています。

それ以外は非言語の情報、つまり顔の表情や顔色、姿勢、身振り手振り、話し方、声のトーン、呼吸、間合い、沈黙、雰囲気等々です。

コーチは、言葉だけではなく、このような非言語情報からもクライアントの内面を読み取り、理解を深めます。

一方、現在のAIは主に言語情報のみに依存しており、非言語的情報を把握する力に限界があります。

将来は、AIにも感情認識の機能が搭載されるかもしれませんが、顔の表情から感情を認識したところで、到底人間の洞察力には及びません。

2. 言葉の裏にある意味をくみ取れない

言葉の使い方は、人によって様々です。
同じ単語でも、人によって意味が違う場合があります。

また対話中に、クライアントが無意識的に、エネルギーの強い言葉を発する場合があります。

コーチは「この人にとって、この言葉の意味は何か」を考え、エネルギーの強い言葉を、重要なキーワードとして捉え、その背景にある深い思いを探ります。

AIは、言葉の意味を単なる情報として捉え、論理的な解釈しかできません。

例)クライアント:〇〇をやろうと思います。

  • コーチ:(クライアントの様子を見て)本当にやりたいですか? 何か引っかかることがありますか?
  • AI:〇〇をやろうと思っているんですね。 それをすると、どんな価値が生まれますか?

3. 対話全体の文脈をつかめない

コーチは、話の断片から「本当のテーマ」を探り出し、対話全体の流れを設計していきます。

例えば、「仕事の話をしているが、実は家族との関係を気にしている」などがあるとします。

コーチは、対話全体の中から総合的にテーマのゴールを類推したり、そのための重要な要素を確認しながら、話の流れをコントロールします。

AIは、直前の発言をもとに次の質問を返すことはできますが、対話全体の文脈を把握しながら、深い問いかけを設計することがまだ出来ないようです。

4. 自分の視点がなく、フィードバックできない

コーチは、評価やアドバイスはしませんが、時には自分の感じたことをフィードバックすることがあります。

AIには「自分の感じ方」が存在しないため、フィードバックを行うことはできません。

例)クライアントの話を聴いて

  • コーチ:今の話を聴いて、私は〇〇のように感じました。〇〇さんはどんな気持ちでしたか?
  • AI:聞いた話をそのまま返す

5. 感情を持たず、共感できない

コーチは、自分の気持ちではなく「この人だったらどう感じるだろう」という共感力がありますが、AIには感情がなく、「この人だったら…」という想像力も持ち合わせていません。

例)クライアント:あの人から〇〇と言われ、目の前が真っ暗になりました

  • コーチ:(気持ちを受け止めて)それは、辛いですね。
  • AI:〇〇と言われ、目の前が真っ暗になったんですね。今後、どのような状態を目指したいと考えていますか?

コーチングのAI活用法

コーチングのAI活用法AIコーチングを試して、率直に感じた気持ちは以下の通りです。

「このコーチ、全く人の気持ちが読めない…」「話したいのはそっちじゃない」「今までの話ちゃんと聞いてた?」「そんなツッコミ入れないで、もっと一緒に考えてくれないかな?」

コーチングの勉強をしたけど、全くコーチングができないダメコーチの練習に付き合っている感覚でした。

つまり、人の気持ちを理解できず、寄り添えず、共感できず、「話の文脈から推測して、潜在意識にアプローチするような質問」ができない人です。

一方で、以下のようなAI活用方法には可能性を感じています。

コーチの役割を果たすために設計されたAIコーチではなく、一般の生成AIにクライアント役を演じてもらい、コーチングのロールプレイをしてみました。

結果は、驚くほど見事にクライアント役を演じてくれました。

マーケティングの世界では、ペルソナ作成に長けているので、あらゆる人物像を演じることができることと、コーチングセッションの事例も深く学習しているようです。

感情を引き出したり、視点を変える質問にも反応し、間を空けたり、気持ちの変化や気づきを表現してくれます。

セッション終了後のフィードバックも的確で、先ほどのAIコーチングとは違って、有能なトレナーという感じです。

今回のテーマ「AIはコーチングができるか」に対しては(将来どうなるか分かりませんが)、現時点では難しいと思います。

一方で、コーチングスキルを磨きたい人にとっては、AIは非常に優れた練習パートナーになり得ると感じました。

「AIコーチング」を通して、「本物のコーチング」とは何かを、改めて見つめ直すことができました。

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