「木綿のハンカチーフ」という昭和の歌謡曲があります。
作詞・松本隆、作曲・筒美京平の作品で、歌手太田裕美の4枚目のシングルレコードとして、1975年にリリースされました。
都会に出た男性と、故郷に残された女性との遠距離のやり取りが歌われている曲で、歌詞の内容や構成はボブ・ディランの曲「Boots of Spanish Leather(邦題:スペイン革のブーツ)」の影響があると思われます。
今回はこの歌詞の内容、つまり男女の対話から、アンコンシャス・バイアスについて考えてみたいと思いいます。
木綿のハンカチーフ
まず、歌詞を引用します。
◇ 作詞:松本隆「木綿のハンカチーフ」からの引用
※Mは男性、Wは女性、繰り返しは省略
1_M
恋人よ ぼくは旅立つ 東へと向う列車で
はなやいだ街で 君への贈りもの 探すつもりだ
1_W
いいえあなた 私は欲しいものはないのよ
ただ都会の絵の具に 染まらないで帰って2_M
恋人よ 半年が過ぎ 逢えないが泣かないでくれ
都会で流行りの 指輪を送るよ 君に似合うはずだ2_W
いいえ 星のダイヤも 海に眠る真珠も
きっと あなたのキスほど きらめくはずないもの3_M
恋人よ いまも素顔で くち紅もつけないままか
見間違うようなスーツ着たぼくの 写真を見てくれ3_W
いいえ 草にねころぶ あなたが好きだったの
でも木枯しのビル街 からだに気をつけてね4_M
恋人よ 君を忘れて 変わってくぼくを許して
毎日愉快に過ごす街角 ぼくは帰れない4_W
あなた 最後のわがまま 贈りものをねだるわ
ねえ 涙拭く 木綿のハンカチーフ下さい
以上、引用終わり
アンコンシャス・バイアス
皆様はこの歌を聴いてどのように感じるでしょうか?
この曲が発表された当時中学生だった私は、「可哀想な女性」という印象しかありませんでした。
しかし、大人に近づくにつれ、捉え方が変化しました。
高校生になると、どちらが悪いと言うより、遠距離恋愛という環境が要因と捉えるようになり、私自身も上京して働き始めると、この男性の気持ちも理解できるようになります。
このように色々な解釈があるにも関わらず、少ない情報だけで勝手に決めつけてしまうこと、その背景にある無意識の思い込みや偏見をアンコンシャス・バイアスといいます。
解釈の例を簡単に挙げてみます。
解釈_1
- 男性は自分の夢を優先して、都会に出ていく
- 彼女の気持ちも考えず、半年も放ったらかし
- 都会の流行りなんて関心がない、会いに来て欲しい彼女
- 洗練された僕をみてくれ、君も少しはオシャレをしたらどうか
- 素朴だった昔の彼が好き、それでも彼の身体を気遣う彼女
- 彼を責めず、間接的に悲しみと別れを告げる彼女
解釈_2
- 志を持って都会に出ていく彼、半年間無我夢中で頑張った
- 大切な彼女のために、素敵な指輪を贈りたい
- 彼女のためにこんなに頑張っているのに、「いいえ」と否定する彼女
- 成長している姿を見せたいのに、昔のあなたが良かったという彼女
- 本当は一緒に未来に向かって行きたいのに、付いてきてくれない彼女
- 自分の夢や目標に向かっていく、僕を許してと謝罪
コーチングの役割
対極をなす二つの解釈を紹介しました。
解釈_1は、身勝手な彼、可哀想な彼女。
解釈_2は、未来に向かって頑張っている彼、昔のように愛してほしいと願うわがままな彼女。
もちろん解釈は二つだけではありません。
この例題で気づいていただきたいのは、自分の中にあるアンコンシャス・バイアスです。
自分は、この歌詞のストーリーを聴いて、どちら側の立場に立って、どんな感情を抱いたのか、などを観察してみてください。
コーチングをしていると、上記のように男女間の課題の場合、女性は女性の立場、男性は男性の立場からの話しか出てきません。
そこには「無意識の思い込み」が多分に含まれています。
特にコーチングを学んでいる方、実践している方は、相手の話には必ずアンコンシャス・バイアスが働いていることを理解した上で、次のようなコミュニケーションを心がけてください。
- 相手が思い込みで話していても、否定しないで(その人の状況や思いを)「傾聴」する
- それは事実か、ただそう思うのかを検証する
- その上で、どうして彼(彼女)はそうするんだろう? を一緒に考える
- ポイントは、人の言動には全て肯定的な理由がある、というつもりで考えること
- お互いの肯定的理由が見つかったら、両者にとって一番良い方法は何かを考える
コーチングは、アンコンシャス・バイアスを解くことと、どちらが良い悪いではなく、両者にとって一番良い方法は何か、を見つける最も優れた手法だと思います。
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