書店に並ぶ新刊でよく見かけるキーワードに「言語化」があります。
言語化が大切な理由は何でしょうか?
それは、自分の思考を言葉にすることによって、曖昧な概念や感覚を整理することができ、精神的にも安定するからです。
また、他者に自分の考えや状態を正しく伝えられれば、誤解やトラブルを回避でき、仕事でもプライベートでも多くのメリットを享受できます。
言語化と聞くと、語彙力とか伝え方とか表現力などを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実は言語化で大切なポイントはそこではありません。
コーチングの現場でも、言語化はとても重要な要素です。
コーチは、クライアントの言葉にならない感覚を出来るだけ引き出すサポートもしますので、言語化力がコーチングの効果にも繋がります。
今回は、コーチングのアプローチで明らかになった、言語化で一番重要なポイントをお伝えいたします。
言語化力を身につけたい方は、以下に述べる3つのプロセスを意識してみてください。
1. 客観的に観察する
「悩む」ことと「考える」ことは違います。
もし悩みを抱えているとしたら、「不安」だったり「イライラ」だったり、感情が邪魔をして、言語化を難しくしているかもしれません。
一旦周りの状況や私の状態を客観的に観察して、何がどうなっているのか明確にすることが大切です。
客観的に観察するためには、紙に書き出すとか誰かに話を聞いてもらうなど、一度自分の中から出してしまうことが有効です。
状況から一歩引いて眺めるような感覚を持つと、自分の考えや感情まで客観視できるようになります。
これは言語化の前段階、素地ができたような状態です。
例)コーチの問い
- 今自分の中で何が起きていますか?
- そのモヤモヤした感覚を一つずつ取り出して名前をつけるとしたら…
- その悩みの中身には、具体的にどんな課題・問題がありますか?
2. どう表現するかの前に「何」を表現するか
言語化できないもう一つの大きな理由は、「何を表現するのか」の「何」が分かっていない状況があります。
「どう言えばいいのか」「どんな言葉を使ったら良いか」などの表現方法を意識しても、「何」に焦点が当たらないと、言語化する意味がありません。
例)映画の感想
◇ 一般的:
- 映画どうだった? → まぁ、良かった
- どんな映画だったの? → えーと、アクション系で…
◇コーチング的:
- 感情が動いたところは? → こんな場面で感動して泣いた
- どうして涙が出たんだろう? → 主人公が真実に気がついて、過去を捨てることができたから
- 主人公の生き方をあなたはどう思う? → 自分もこんな風に生きられたらどんなに幸せだろう、と思った
上記事例のように、質問によって「何」に焦点が当たれば、より具体的で中身のある答えになります。
誰かに質問されなくても、自ら言語化できるようになるためには、私自身が感じていることに意識を向け、「思考」や「感情」が何を訴えているのか明らかにすることです。
まるで、自分の中にもう一人の自分がいるつもりで、コーチのような問いかけをしてみます。
例えば、「この件で印象に残っていることは何?」「その時どんな気持ちだった?」「この体験で学んだことは何?」などの方向に意識が向かえば、自然に言語化されていきます。
3. 相手は何を知りたいのか聴く
質問したのに答えにならない話をする、話題が逸れていく、対話が噛み合わない…、このように感じた経験を皆様はお持ちでしょうか?
ごく簡単な例で見ていきます。
例_1:客:このケーキ一つ幾らですか?
- このケーキは生クリームと旬の苺が…
→ ケーキの値段を聞いているのに、ケーキの特徴を話している
例_2:上司:今回のトラブルは何故起きた?
- すいません、早めにチェックしておけばよかったんですが…
→ トラブルの理由を聞いているのに、謝罪や言い訳をする
当たり前の話ですが、質問に答えることで対話が成り立ちます。
何故事例のようなことが起きるのかと言えば、相手の質問の意図を深く理解せず、ただ耳に入ってくる言葉に反応しているからです。
つまり「相手の話を正しく聞いていない」ということです。
質問の有無に関わらず、対話の中で言語化するポイントは次の通りです。
- 相手の話をしっかり聴く(頭であれこれ考えず聴くことに集中)
- 「どう答えよう」と考えるより、「相手は何を知りたいのか」を考える
- 相手の考えや気持ちが理解できると、伝える内容が自然に出てくる
相手の話をしっかり聴くこと、つまり傾聴することによって、私の頭から出てきた言葉ではなく、私の心から湧いてくる思いが言葉になります。
ご紹介した3つのポイントは次の通りです。
これをを念頭に、言語化力を磨いてください。
- 客観的に観察する
- どう表現するかの前に「何」を表現するか
- 相手は何を知りたいのか聴く
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