私たちはしばしば、人生で最も「賢い」のは20代の頃だと考えがちです。
脳科学・認知心理学では、記憶力や情報処理能力は18〜25歳でピークを迎えるとされています。
このような情報に加え、肉体的な衰えも感じる年齢になると、「若い人には敵わない」と感じる人が多いのではないでしょうか?
しかし、最新の心理学研究はこの見方を覆す驚くべき結論を示しています。
西オーストラリア大学とポーランドのワルシャワ大学に所属する研究者らが発表した論文「Humans peak in midlife: A combined cognitive and personality trait perspective」によると、人間の総合的な能力のピークは、なんと55〜60歳である可能性が高いと報告されました。
賢さとは何か?
心理学では、新しい状況で素早く考え判断する力を「流動性知能」、学習や経験によって固まっていく知恵を「結晶性知能」と呼んでいます。
この流動性知能は、20代でピークに達し、その後は緩やかに低下する傾向を示しています。
しかし、人間の「賢さ」はそれだけではありません。
結晶性知能、すなわち蓄積された知識や経験、人生で培った判断力、言語能力、感情の成熟などは、加齢とともに強化されることが分かっています。
特に以下の要素は、いずれも中高年期にピークを迎える研究結果となっています。
- 語彙力:60代がピーク
- お金を管理する能力:60代後半から70代前半がピーク
- 道徳的・倫理的な判断力:成人期を通じて向上
- 情動知能(自己と他者の感情を理解し適切に対応する能力):40代がピーク
- 「サンクコスト錯誤」への抵抗力(投資した時間やお金にとらわれず、合理的な判断を下す能力):年齢とともに向上
- 誠実性:60代前半まで上昇
- 情緒安定性(ストレスへの対処能力):中年期にかけて向上
このような要素と、20代後半から低下する内容も全て含めて、総合的な評価が55〜60歳という研究結果です。
「賢さ」とは、単なる知識や頭の回転の速さだけではなく、深い洞察と状況に応じて適切な判断や行動に移せる力も含みます。
この研究によって、歳を重ねてこそ「賢さ」が磨かれていくことが理解できます。
年をとるだけで良いのか?
ここまで見てきたように、加齢は単なる衰えではなく、人間としての成熟と能力の深化もたらし、豊かな人生のゴールに向かう大切なプロセスと言えます。
「では、年をとれば誰でも賢くなれるのか?」という疑問が湧いてくるかもしれません。
これには個人差があり、勿論「年さえとれば良い」という単純な話ではありません。
アドラーは「人生に失敗はない」と言います。
これは「悪いことが起きない」という意味ではなく、「経験をどう解釈し、次へどう活かすか」という視点に基づいています。
何か上手くいかないことがあると、自信を失ったり、諦めたり、そこから目を背けてしまうことがあります。
この姿勢は、経験から学ぶという機会を失ったり、「あれは悪い出来事だった」という解釈を持ちやすくなります。これでは本当の失敗になってしまいます。
アドラーの視点はこうです。
上手くいかないことがあっても、「こうすると上手くいかないことが分かった」という学びが得られます。
学んだ結果「次はどうしたら良いか」という発想を持ち、最適解を得て次の行動に移す方向に向かいます。
こうして、あらゆる経験は学びと成長に繋がり、失敗という概念は無くなります。
良いことがあっても、その場で喜んで終わる人と、「その経験で何を学んだのか」「それを踏まえて次はどうするのか」という思考を持つ人とでは、その後の人生が違ったものになるでしょう。
歳を重ねることで「賢さ」を身につけていく人は、どんな出来事であっても、そこで何かを学び、次の行動に活かしていく習慣を待つ人です。
経験を学びと成長に変えるコーチング
人生経験を洞察し、深い気づきを得るためには、柔軟な思考による「内省」と「対話」の時間が重要です。
ここで、大変有効なツールになるのがコーチングです。
「あの出来事は人生の汚点」とか、「思い出したくない恥ずかしいこと」などは、既にレッテルが貼られているため、自分で解釈を変えることが困難です。
しかし、人生のあらゆる経験は学びの宝庫です。
コーチは、クライアントの認知バイアスを回避し、心理的安全性を与え、改めて冷静に客観的に出来事を見つめ直す場を提供できます。
その結果、今までにない視点が生まれたり、大切な価値観に気づいたりすることがあります。
若年期は、やりたいことに果敢にチャレンジして、多くの経験を得て学べるように、中高年期には、過去の経験を無駄にすることなく、豊かな人生のための資産にすることができるように、是非コーチングを活用してください。
歳を重ねることは、衰退ではなく成熟した人生と完成に向かうプロセスです。
新しい年を迎え、「また一つ年をとる」ことを悲観ではなく、より「賢く」聡明な自分になっていくことを希望に、より良い一年をお過ごしください。
引用論文
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0160289625000649






















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