質問と気づき|https://adpa.site/question/question-and-awareness/ の中で、「質問によって人間はどのような影響を受けるのか」「人生を変えるほどの気づきも質問から生じる」というお話をしました。
今回は質問する上で参考になる考え方を紹介します。
ロバート・ディルツ氏は人間の意識を6段階に分類しました(右図)。
これをニューロ・ロジカル・レベルと言います。
環境
英語では whenやwhere など、日々の生活の外的な側面に関する内容です。
例)今日は良い天気、故郷は〇〇県、我が家は何人家族、職場はこんな感じ、…などです。
環境に関する内容は、良く知らない者同士でも通じるので、話の入口として扱いやすい話題になります。
行動
英語ではwhatに該当します。
例)散歩します、食べます、会いに行きます、音楽を聴きます、勉強します、など特定の行動です。
能力
英語ではHow。
どのようにそれをするのかなどの能力面になります。
例)1時間かけて、素早く、〇〇検定一級、ダンスが上手、…など。
信念・価値観
英語ではWhyに該当します。
「何故それをするのか」など、本人が大切にしているもの、価値観や信念が分かるレベルです。
例)儲かるから、カッコいいから、自分の成長のため、人として正しいと思うから、皆に喜んでもらいたい、…など。
自己認識
英語ではWho。
「私は誰」というアイデンティティを指すレベルで、私の使命(ミッション)や、生きている目的という要素に関連してきます。
実際には、幾つかのアイデンティティ持っていることが多く、場面によって使い分けます。
例)老舗の造り酒屋5代目、良き夫であり、良き父親、私は〇〇をするために生まれてきた…など。
自分を超えた存在
英語では、For what, For whom(何のため、誰のため)。
家族のため、会社のためなど、自分以外の存在との繋がりを意識するレベルですが、広い意味では、自分はより大きな存在の一部であるとか、宇宙であったり、歴史であったり、スピリチュアルな領域など、人知を超えた世界なども含みます。
例)世のため・人のため、お天道様が見ている、宇宙の神秘、神仏によって守られている、共同体感覚、…など。
会話例
よく近所で立ち話をしているおばちゃん達の会話を聞いてみると、環境レベルの話を延々としていることがあります。気候の話、健康の話、物価の話、最近こんなことがあった…等々。
もちろんそのような関係性であったり、このような会話で用件が済むのであればそれも良いコミュニケーションだと思います。
しかし、もっと深く相手を理解したい場合に、このニューロ・ロジカル・レベルが役に立ちます。
ここでは、相手の意識レベルを質問によって変化させながら、より相手の人間性を引き出すような会話例を挙げてみます。
cl:クライアント
co:コーチ
cl:昨日は良い天気だったので、公園に行きました。(環境)
co:公園ではどのように過ごしますか?(環境→行動)
cl:公園内の遊歩道をウォーキングします。(行動)
co:どの位の距離を歩くんですか?(行動→能力)
cl:30分かけて3km位歩きます。ほぼ毎日続けてますが、かれこれ1年になります。(能力)
co:毎日1年間ですか⁉。続けてみてどんな点が良いですか?(能力→価値観)
cl:ダイエットというより、身体と心のバランスが整えられていく感じがあります。それから季節の移ろいを感じられることが何よりも良いですね。(価値観)
co:周りの風景や季節の変化を見てどんな発見がありますか?(価値観→自己認識)
cl:草花が小さい花を咲かせたりするのを見ると、なんだか優しい気持ちになったり、自分自身もこのような自然に生かされている感じがします。(自己認識)
co:大自然に生かされている感じですね~。Aさんが一番自分らしいと思える生き方や、理想とする人生はどんな様子ですか?(自己認識+)
cl:大自然で思い出しましたけど、本当はエベレストとか、登頂が難しいK2の登山とか、チャレンジするのが夢です。自分という人間はどこまでやれるのか、限界に挑戦してみたいです。(自己認識+)
co:いいですねー。最も登頂が難しい山の頂上に立って、周りを見渡すとどんな気持ちになりますか?(自己認識→自分を超えた存在)
cl:感動ですね。目に見えない力を感じるというか、神様目線で世界を眺めるような気持ちになると思います。(自分を超えた存在)
co:神様目線で下界を見渡すと、昨日までの自分はどんな風に見えますか?(自分を超えた存在→環境)
cl:なんだか、自分の生活のためにちまちま働くちっぽけな存在に見えます。(自分を超えた存在→環境)
co:Aさんは、今までの人生経験を活かして世の中に貢献するとしたら、どんなことをしたいですか?(自分を超えた存在→行動)
cl:そうですねー。困っている人をサポートしたり、笑顔にしてあげられる仕事ができたら良いだろうなー、と思います。(自分を超えた存在→行動)
この例では、信念・価値観、自己認識、自分を超えた存在を意識してもらい、その上で環境や行動レベルを見直してもらう、という会話になりました。
上位レベルが確立すれば全て解決する
多くの人から悩みの話を聴くと、大体下位3つのレベルの内容がほとんどです。
- 部屋が散らかっていて片付かない(環境)
- 上司がいつも怒っていて社内の雰囲気が悪い(環境)
- 朝なかなか早く起きられない(行動)
- 食生活が不規則だ(行動)
- 私は喋るのが苦手だ(能力)
- 仕事で必要な資格がなかなか取れない(能力)
環境レベルの悩みを環境レベルで解決することはなかなか難しく、行動レベルも能力レベルも同様です。
また、環境レベルの課題を克服したとしても、それによって行動、さらに能力に与える影響はごく僅かです。
例えば、誰かに部屋を綺麗に片付けてもらっても、それによって私の行動に大きな変化が訪れたり、能力が身に着くことは稀です。
一方で、「私はこれをするために生まれてきたんだ」という「自己認識」が確立されると、生きていくための指針となるべき「価値観」が確立し、そのために必要な「能力」を身に付け、相応しい生活習慣「行動」が生まれ、その目的を中心とした「環境」になります。
もし、その目的を果たすために整理整頓された部屋が必要であれば、自動的に整っていくようになります。
上位レベルが下位レベルに与える影響が大きいということです。
コーチはクライアントの話を聴きながら、本当はどうなりたいのか、一番大切にしていることは何か、心から望んでいること、本来の自分の姿、理想の状態などにアクセスしていきます。
クライアントがこれらに気づいたら、悩みや課題の解決、具体的な方法や手段など自分で答えを見つけるようになります。
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