アメリカの人類学者デヴィッド・グレーバーは2018年に、「 Bullshit Jobs:A Theory」という著書を出版しました。
日本語のタイトルは「ブルシット・ジョブ ― クソどうでもいい仕事の理論」です。
ブルシット(Bullshit)とは、直訳すると「牛糞」ですが、「クソみたいな」「いんちき」「どうでもいい」といった意味を持つ英語のスラングです。
グレーバーは「ブルシット・ジョブ」の定義について以下のように記しています。
「ブルシット・ジョブとは、被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完全に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態である。
とはいえ、その雇用条件の一環として、本人は、そうではないと取り繕わなければならないように感じている。」
5種類のブルシット・ジョブ
そして、グレーバーは次の5種類の「ブルシット・ジョブ」について説明しています(以下Wikipediaからの引用)。
- 取り巻き
誰かを偉そうにみせたり、偉そうな気分を味わわせたりするためだけに存在している仕事。
例えば、受付係、管理アシスタント、ドアアテンダント。「管理職に昇進した以上、部下をつけなければならない」と見做されて仕事もないのに雇われた人々。 - 脅し屋
雇用主のために他人を脅したり欺いたりする要素を持ち、そのことに意味が感じられない仕事。
ロビイスト、顧問弁護士、テレマーケティング業者、広報スペシャリストなど、雇用主に代わって他人を傷つけたり欺いたりするために行動する悪党。 - 尻ぬぐい
組織のなかの存在してはならない欠陥を取り繕うためだけに存在している仕事。
たとえば、粗雑なコードを修復するプログラマー、バッグが到着しない乗客を落ち着かせる航空会社のデスクスタッフ。 - 書類穴埋め人
組織が実際にはやっていないことを、やっていると主張するために存在している仕事。
たとえば、調査管理者、社内の雑誌ジャーナリスト、企業コンプライアンス担当者など。役に立たないときに何か便利なことが行われているように見せる。 - タスクマスター
他人に仕事を割り当てるためだけに存在し、ブルシット・ジョブを作り出す仕事。中間管理職など。
ムダ会議による損失
私もサラリーマン時代には、無駄だと思う会議に参加し、そのような会議のために誰かがコーヒーを準備し、まともに読んでもらえない報告書作成に本業同様の時間を割き、そんなことをするために満員電車で往復数時間も揺られることに疑問を感じていました。
パーソル総合研究所が2018年に行った調査報告によると、会議をムダだと思っている人の割合はメンバー層で23.3%、上司層で27.5%。
それらの数値を用いて「ムダ会議」による企業の損失額を算出すると、1500人規模の企業で年間約2億円、1万人規模の企業においては、年間約15億円もの規模になります(人件費)。
上述の著書の賛否や、指摘している問題点については専門家に任せるとして、ここではコーチとして関われることを考えてみます。
コーチにできること
- 気づきを与える
例えば次のような問いかけで、大切なことに目を向けてもらう。- 仕事は楽しいですか?
- 何のために仕事をしているんだろう?
- ブルシット・ジョブによって精神をすり減らし、自分らしさ、人間らしさを失うなんておかしくない?
- もっと自由に創造的に生きられたらどんな事を成し遂げられるだろう?
- 人生の主人公は私であって、私は運命の奴隷ではない。
- 人間関係・コミュニケーションを変える
- 自分で気づけることには限界があるので、周りの人達とのコミュニケーションの取り方を変えてみる。
- 例えば、打算や駆け引きでの付き合い、上下や勝ち負けで人間を見る事を一旦手放して、相手の話を受け入れつつ、自分の率直な考えも伝えられるスキルを身につけるなど。
- 勇気を与える
- 例えば、自分や他人ではなく「仕事」を目的に据えて「会議を見直そう」と言える勇気を持つ人になる。
- ここに望む環境がなければ「自分でつくる」という発想を持つ人になる。
- 自分の存在意義、使命や役割、自分軸を持って生きられるようになると、自発的に行動できるようになる。
私の影響力
世の中の問題点を指摘する人、それに対して専門的に論評する人もいます。
私たちはこれらの情報に対して、誰かを悪者にしたり、不合理な社会を嘆いたりするだけで済ませるかもしれません。
何故なら、自分は小さな存在で世の中に影響を与えられるほどの力はない、と考えがちだからです。
しかし、コミュニケーションを少し変えるだけで目の前の相手が変わったり、職場が変わったり、様々なコミュニティに新しい風を吹かせることは可能です。
是非、コーチングのマインドとスキルを用いて、身近な所から今までとは違うアクションを試みてください。
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