人間関係はこれで解決
人間にとっての最大の悩みは人間関係と言われています。
アドラーは「人間の悩みはすべて、対人関係の悩みである」と述べています。
*(対人関係と人間関係の違いはここでは割愛します)
人間関係が悪化すると、いじめ、虐待、パワハラ、差別などに発展したり、もっと大きな規模で見ると民族紛争、侵略、テロリズムなども人間関係に端を発していると言えるのではないでしょうか。
多様性を唱え、全ての人に同等の価値がある、という考え方は広く支持されていますが、私たちの意識と実生活はどうなっているでしょうか?
まずは身近な所から考えてみましょう。
実は、人間関係が悪くなる理由、上手くいく方法は、明確に説明することができます。
答えはシンプルです。縦の関係と横の関係をスッキリ整理すれば良いのです。
縦の関係と横の関係
人間関係には縦の関係(上下関係)と横の関係があります。
縦の関係は、家庭では親と子、会社では上司と部下、学校では先生と生徒、グループ内の先輩と後輩など、組織の中での上下関係になります。
横の関係は、友達、同期、同じ志を持つ仲間などです。
人間関係が難しくなる主な理由は、間違った上下関係にあります。
縦の関係である親子、上司部下、先生生徒も人間としての価値は同じです。
組織の中での上下は、目的に向かっていくための役割であって、人間としての価値は等しく対等です。
つまり人間の本質は全て横の関係であって、縦の関係は組織や社会の中での役割であるにも関わらず、人間そのものの上下だと勘違いしてしまう所に問題が生じます。
いくつか例を挙げて見ていきましょう。
例1_会社
上司と部下は会社の目的を果たすための役割です。
経歴が豊富で仕事が出来る上司が、経験の浅い未熟な部下に仕事を教えることは、職務上必要なことです。
しかし人間の価値においては、仕事が出来る上司が上で、未熟な部下が下ではありません。人間としての価値は対等です。
勘違いしている上司は「だからお前はダメなんだ」などと、仕事の力量と人間性をイコールで考えます。
職務上の地位を利用して部下に過度の負担を与えるパワハラが良い例です。
横の関係を築ける上司は、仕事を教えた上で、本人の意思と行動を尊重します。
部下が何かを失敗して、仕事上必要な処置を講ずるとしても、人間としての尊厳は守ります。
では、部下から見た上司との横の関係は、どう考えたら良いでしょうか?
仕事を教えてもらう立場としては下ですが、言われたことしかしない、自分の頭で考えないのは、人間としても下に留まっていることになります。
会社の目的を中心として上司と横の関係に立てれば、上司からは見えないことに気づいたり、部下ならではのアイデアが与えられたりします。
もし上司よりも実績を上げたとしても、自分が上という意識を持つと逆の上下関係を作ってしまいます。
人間としてはあくまでも横の関係であり、職務上目上の人には敬意を持って接するのは言うまでもありません。
もし高い地位にいる上司が偉そうに振る舞っても、自分は低い位置にいると卑下する必要はなく、また逆に相手を見下すことも良くありません。
下でもないが上でもない、という感覚が大切です。
例2_家庭
親子は上下関係である、という見方が一般的な感覚だと思います。
しかしあえて横の関係である、と断言します。
親は幼い子供を養育し教育し保護してあげます。
家庭の中での役割や力関係という観点では、上下関係と言えるでしょう。
しかし、生まれたばかりの赤ちゃんは自分では何もできないから価値の低い存在、養ってあげる人が価値の高い存在でしょうか?
何もできなくても尊い存在、かけがえの無い存在、そして赤ちゃんがニッコリと笑顔を見せてくれただけで、この上ない幸せを感じるのが多くの親の共通の感覚ではないでしょうか。
つまり、何かができるできないではなく、人間としての価値は対等であり、そこに上下はないと考えます。
役割という観点では、親が子供に与えるという一方通行ではなく、親も子供から多くのエネルギーをもらい、子供によって成長し、愛を深める機会を与えてもらいます。
子供が弱い立場であるが故に、自分が上であると勘違いしている親は、「言うことを聞きなさい」「そんなことをしてはダメ」と、自分の思いどりにコントロールしようとします。
この親のもとに育つ子供は、反発するか、萎縮するか、聞いてるフリをして無視するか、何れかの態度になり、個人の成長に支障が出てしまいます。
反発は自分が上に立とうとする、萎縮は自分が下のままでいようとする、無視は親との良好な関係を諦める行為と言えます。
横の関係を築ける親は、必要な情報を伝えた上で、「〇〇はどうする?」「〇〇はどうしたい?」と、本人が考え選択する余地を与えます。
幼い存在であったとしても、一人前の人間として関わることで、本人の個性が育ち、責任感が生まれ、成長と自立を促します。
例3_友達
横の関係である友達でも、人間関係が悪くなることがある、と思う方もいるでしょう。
これは、横の関係である友達なのに、そこに上下関係を作ってしまうから悪くなると考えられます。
例えば、意見が分かれた時に「私が正しい」「相手が間違っている」という思考は、どこかで上下関係を作る行為です。
本当に信頼し合っている友達であれば、「そう考えるんだね」と相手の意見を受け入れ、「私はこう思う」と自分の意見も伝え、考え方が違っていてもお互いを尊重し認め合えるはずです。
横の関係を築くことによって、優劣からくる負の感情から解放され、お互いの個性を認め合う真の友達になれます。
例4_男女
当たり前の話ですが、男性と女性の価値は同じです。何故男尊女卑のような時代が過去にあったのでしょうか?
恐らく、力仕事をさせれば男性の方が優位に立つなど、「力の強い者が上」のような貧しい考え方だったのかもしれません。
男性は男性が得意なことがあり、女性は女性が得意なことがあって、こちらも役割が違うだけで、上下ではなく横の関係です。
結婚しても、どちらが稼いでいるとか、どちらが家事をしているなどを上下で見ることなく、夫婦又は家庭の理想・目的を中心としての役割があり、人間としては横の関係であると見ることが大切です。
性差を無くそうという風潮があります。差別はあってはならないことですが、生物学的な違いは当然あります。
違いを認めた上で、上下ではなく横の関係を作り、適性に合ったポジションで活躍できる社会が作れるはずです。
時代の変化
幾つかの身近な例でご紹介したように、全ての人間関係は横の関係です。
そうは言っても、賢い人と愚かな人、富める人と貧しい人、身分の高い人と低い人がいるじゃないか、という意見もあるでしょう。
私はこのような社会は過去の産物であって、今後世の中が成熟社会になるにつれ無くなっていくだろうと考えています。
ビジネスの社会でもwin-winの関係や、「お金に物を言わせる」ことが通用しなくなりつつあります。
過去の縦社会から、インターネットに代表されるように簡単に横の繋がりを持てるようにもなりました。
世界的に、人種、国籍、宗教、障害等々、多様性に寛容な社会になりつつあることは実感していただけると思います。
このような時代的背景の中で、コーチングも認知され、活用され始めたのだと感じます。
コーチングのコーチは、クライアントと横の関係を築けるかどうかが大変重要です。
コーチがクライアントに対して「助けてあげる」「変えてあげる」「教えてあげる」など、上の位置にいる意識を持つとコーチングになりません。
逆に、クライアントをお客様扱いして遠慮するとか、言われた通り従うなど、下の位置にいる意識でもコーチングになりません。
あくまでも横の関係で、どんな内容でも受け入れ、言うべきことはしっかり伝え、一緒に同じ方向に向かうことで、コーチングの効果が発揮されます。
このことは、コーチに限らず全ての人に共通しています。
人間関係に問題が生じるのは、自分でも気がつかないうちに上下で見てしまう癖があるからです。
上下の意識がどこかにある限り、優越感や劣等感、競争、承認欲求など、余計な所にエネルギーを使い、自分らしさを失ってしまいます。
繰り返しになりますが、組織上の上下は役割であって、人間は全て横の関係です。
この考え方にマインドシフトすれば、人間関係はどんどん好転していきます。
相澤コーチ
先日はフォンシュレーダー主催の総会で講話を聴かせて
頂きました。人間、人、物、金、中でもコミュニケーション力が価値観が何を目指すのか、何をしたいのか
等自分自身に問いかける気付きをもらいました。
考える事の大事さを再認識した講話でした。
改めて感謝申し上げます。今後もより良い人生の勉強を続けていくつもりです。
飯塚様
コメントありがとうございます。
私のお話で「自分自身に問いかける」きっかけを作れたのであればとても嬉しいです。
継続されることで、より良い人生になっていくことを確信いたします。