自己肯定感
内閣府が調査した統計によると、日本人は諸外国に比べて自己肯定感が低いようです。
今回は「自己肯定感」とは何か、そしてそれは自分でコントロールできるものなのか、改めて考えてみます。
自己肯定感とは「自分の存在を肯定的に受け止める」「自分を価値ある人間だと認められる」などの感覚を言います。
自己肯定感は、自分自身を支えるエネルギーになり、幸福の土台になるのではないかと思います。
コーチングにおいても、自己肯定感は大切な要素と見ています。
自己肯定感の高いクライアントはコーチングの効果が大きく、そうではないクライアントには、コーチングによって自己肯定感を高めることも可能です。
しかし「自己肯定感」の定義は人によって違いがあり、誤解して使われるケースも見られます。
まず初めに類義語(と思われている言葉)との違いを整理してみます。
「自信」と「自己肯定感」
一般的に使われる「自信」は、自分の才能や能力を信じている状態です。
それに対して「自己肯定感」の高い人は、才能や能力の有無に関わらず、自分を受け入れ肯定しています。
「自信」を持つ根拠が自分の才能や能力である場合、むしろ「自己肯定感」が低いかもしれません。
別の言い方をすると、「自己肯定感」が高い人は「根拠のない自信」があります。
「根拠のない自信」と聞くと、それは「過信」ではないか? と疑う方もいるでしょう。
「過信」と言うのは、本当の実力を正しく理解せず、不確かな情報や思い込みで過剰に自信を持つ状態です。
「自己肯定感」の高い人は、過去の失敗や自分の欠点も含めて自分を受け入れているため、過剰な自信にはなりません。
結果がどうであれ、そこから学び成長できることを知っているため、失敗を恐れずチャレンジすることができます。
それが「静かな自信」になり「根拠のない自信」となります。
「自己肯定」と「自己肯定感」
アドラーは「自己肯定」を、「できないことでも『自分はできる』と言い聞かせること」と意味づけ、否定しています。
無理やりポジティブに考えようとすることは、自分に嘘をつくことになり、根底には「できない自分はダメなんだ」という自己否定があります。
「自己肯定感」は「できない自分でもよい」と思えるので、その上でどうしたら良いのかを肯定的に考えることができます。
このように「自己肯定」と「自己肯定感」は、似ているようで全く違います。
「自己愛」と「自己肯定感」
「自己肯定感」にも「自分が好き」という感覚はありますので、この点では一致します。
しかし、「自己愛」の強いナルシストは、自分だけが特別な存在で他者には関心がなく、他者からの評価は気にします。
「自己肯定感」が高い人は、評価を気にせず自分を受け入れ、他者も同様に受け入れることができます。
この点が大きな違いです。
「自己肯定感」の構成要素
以下は「自己肯定感」の同義語として説明している専門家もいますが、私は「自己肯定感」の構成要素と捉えています。
- 自尊感情:自分を価値ある人間だと思える感覚
- 自己受容:ありのままの自分をそのまま受け入れられる感覚
- 自己効力感:自分にはできると思える感覚
- 自己有用感:自分は何かの役に立っているという感覚
上記の要素がセットになって「自己肯定感」全体を支えている、と考えられます。
このような要素が備わっている人は、自分らしさを発揮しながら生き、他者とも良好な関係を築き、幸せな人生を送れるのではないでしょうか。
「自己肯定感」の形成
世の中には「自己肯定感」の高い人と低い人がいます。
また、人によっては「自己否定感」が強い人もいます。
一体これらはどこで形成されるのでしょうか?
実は、生まれたばかりの赤ちゃんには「私はこれができない」とか「私はダメな人」などの概念は当然ありません。
つまり「自己肯定感100%」で生まれてくるのが人間です。
これが維持される人が「自己肯定感」が高い人、下がってしまった人が「自己肯定感」の低い人と言えそうです。
ご想像の通り、幼少期の家族関係・家庭環境、学校教育や周りの人間関係で形成されます。
「日本人が低い」と冒頭でご紹介したように、国や時代などの影響もあるでしょう。
ここで注目したいのは、「自己肯定感」の高低は、後天的に作られるということです。
遺伝とかその人の性質ではなく、生活環境で作られるのであれば、今からでも変えることができる、という所に希望があります。
次回は「自己肯定感」の高め方、について詳しくご紹介します。
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