ダブルバインドとは
ダブルバインドは「二重拘束」と直訳できます。
ふたつの矛盾したメッセージを受けた人が、どうしていいかわからず精神的にストレスがかかる状態を指して言います。
アメリカの精神科医グレゴリー・ベイトソンが提唱した「ダブルバインド理論」に由来しています。
彼が示した事例を紹介します。
統合失調症で入院をしていた若い男性がいました。
入院中は家族との面会が許されていなかったのですが、病状が快方に向かい、そろそろ退院しても良いのではないかということで、お母さんとの面会が許されました。
病室の様子
お母さん:笑顔で「良くなってよかったね」と言葉をかけます。
息子:久しぶりにお母さんに会えたのが嬉しくて抱きつこうとします。
お母さん:その瞬間身体を強張らせ、緊張した反応を示します。
息子:お母さんから拒否されたような感じを受け、抱きつく動作をやめます。
お母さん:「お母さんが久しぶりに会いに来たのに、お前は嬉しくないの?」と言います。
このお母さんのように、言葉が発しているメッセージと身体が発しているメッセージが矛盾する場合、息子は感情や思考をうまくまとめることができなくなってしまいます。
抱きつけばお母さんから拒否され、抱きつかなければ「どうして…?」と責められるため、脳が混乱します。
このように、どちらをとっても辛い状況になってしまうことをダブルバインドと言います。
ダブルバインドの悪影響
私達は、程度の差こそあれダブルバインドの加害者や被害者の経験があるのではないでしょうか?
- 親子:
「怒らないから正直に言いなさい」→ 怒る
「好きなお菓子買っていいよ」 → 「こういうのはダメ、こっちにしなさい」 - 職場:
「分からないことがあれば質問しなさい」 → 「そんなことも分からないのか」
「自由にやってみなさい」 → 「何でこんなことしたんだ」
ダブルバインドは、無意識的に発信している言動が受け手側にストレスを与えてしまっていることがほとんどです。
特に家庭内の場合、逃げ場のない子供がダブルバインドを繰り返し受け続けると、過度なストレスを抱え込み、コミュニケーションや日常生活に支障をきたす危険があります。
極端な例ですが、コミュニケーションのとり方を以下のように学習してしまうケースもあります。
- 言葉に表されていない意味にばかり偏執する (妄想型)
- 言葉の文字通りの意味にしか反応しなくなる (破瓜型:はかがた)
- コミュニケーションそのものから逃避する (緊張型)
メンタルヘルスの面でも、以下のような影響が心配されます。
- 親を信頼できず、他人も信頼しなくなる
- 自己否定の思考を持ったり、自己主張できなくなる
- 自分の本当の気持ちが分からなくなる
- 自己肯定感が低下する
- 思考が停止する
グレゴリー・ベイトソンは「ダブルバインドが統合失調症の原因」と主張していますが、医学界では認められていません。
しかし、様々な精神疾患につながってしまう可能性があるということは認識しておく必要があるでしょう。
ダブルバインドの対処方法
まず、自分が強い立場(親、先生、上司)にある場合は、自分の言動に注意を払い、相手がどう受け止めるのか観察してください。
感情に任せるコミュニケーションはダブルバインド陥る場合もあるので、当サイトなどを参考にコーチング的なコミュニケーションを心がけてください。
被害者側にいる場合は、次の内容を参考に早めに対処することをお勧めします。
- その関係から逃げる
可能であればその関係を離れて、冷静になれる環境を持つことが大切です - 相談する
信頼できる専門家に相談してください。コーチング、特にNLPで解消することが可能です - 別な視点で働きかける
どちらかを選ばなければいけない心理状態がダブルバインドなので、「そもそもそれをする目的は何」「その選択肢ではなく私が欲しいのはこっち」という視点を持つようにしてください
肯定的ダブルバインド
今まで説明したダブルバインドは、どちらを選んでもマイナスになる「否定的ダブルバインド」でしたが、「肯定的ダブルバインド」を紹介します。
催眠療法で有名なミルトン・エリクソンは、ダブルバインドの理論を治療に応用しました。
「エリクソニアン・ダブルバインド」又は「治療的ダブルバインド」と呼ばれ、どちらを選んでも良い方向に行く方法です。
例)
- NOと言えない患者に対して
「私も含めて全ての人にNOと言いなさい」 - ポジティブに導く質問
「気づいていますか? あなたには無限の可能性があることを」
この「肯定的ダブルバインド」は子育てやビジネスの世界でも応用されています。
例)
- 「宿題をしなさい」→「宿題はおやつの前にする、後にする?」
- 「こちらの商品をお勧めします」→「こちらの商品でしたら、赤と白、どちらの色がお好みですか?」
「肯定的ダブルバインド」は使い方を誤ると、相手にとっては「無理やり選ばされた」という感覚になります。
あくまでも相手が本来持っている「可能性」「勇気」「能力」「前向きな姿勢」など、正のエネルギーを引き出してあげるような場面で使ってみてください。
この記事へのコメントはありません。