解決こそが問題である
人間関係の課題を抱えている方に一度考えて欲しいテーマです。
「解決こそが問題である」
これはソリューション・フォーカスやブリーフセラピーという手法を用いる方々の考え方の一つです。
「問題(とされているもの)」の「解決」よりも、不適切な「解決努力」を放棄させることで問題を「解消」することに主眼を置いています。
例えば、何かに取り組んでいるけど成果が出ない人がいるとします。
良かれと思ってアドバイスをしても、相手に抵抗感があるとなかなか改善しません。
上手くいかないのでますます教えたくなる、という関わりを繰り返すと、相手は反発して問題が解決するどころか、かえって問題が大きくなります。
別な例を挙げると、「かわいそうだな」と思って話しを聴いてあげる、「かわいそうだな」と思って手助けしてあげるなど、「かわいそう」を理由に繰り返し関わっているとどうなるでしょう。
その相手が、いつまでも「かわいそう」な存在として誰かに依存して生きることになれば、現状の脱却や成長が望めなくなるかもしれません。
このように「問題を解決しよう」という関わりが、かえって問題を作り、解決を難しくしているという現実は身近な所に多く潜んでいます。
では、問題を解決しなければ良いのでしょうか?
そんな単純な話ではなく、コーチングではコミュニケションのとり方を変えましょうと提案します。
知覚力の自修作用
コーチングの原点と言われている「インナーゲーム」の著者ティモシー・ガルウェイは、テニスのトレーニングでとてもユニークな指導を行いました。
例えば、バックハンドが苦手な生徒に、「それを直すのはしばらくお預けにして、まず飛んでくるボールをもっと良く観察してみよう」と提案します。
「ラケットがボールをヒットする瞬間、ボールは上昇中なのか、水平飛行なのか、あるいは下降中なのかを見極めてほしい」などと、具体的な打ち方よりもボールを観察することに集中させました。
そうすると、それまでに見られた技術的な問題点の多くが、たちどころに消えていったそうです。
どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?
ガルウェイは人間の中に二人の自分がいると言います。
- セルフ1 = 指示し評価する自分
- セルフ2 = 無意識
観察することに集中すると、セルフ1が消え、セルフ2が自ずと最も効果的で効率的な自動運転を始めます。
これを「知覚力の自修作用」と言います。
人間の無意識は意識よりも遥かに有能で、頭で考えなくても勝手に色々なことを実行してくれます。
アスリートが最高のパフォーマンスを発揮している時は、心は静かで高い集中力があり、身体をコントロールしようと思わなくても、自然に身体が適切な動きをしてくれます。
「フロー」や「ゾーンに入る」という状態と同様で、無意識の自動運転と言えます。
問題を問題視しないコミュニケーション
最初のテーマに戻って「問題を解決しようとしない」コミュニケーションについてまとめてみます。
- 「知覚力の自修作用」を活用する
「無意識に最高のパワーがあること」や「知覚力の自修作用」があることを信じ、頭であれこれ考えず集中してありのままの状況を観察する - 承認と信頼
ありのままを受け入れ、相手は自分で解決できることを信頼し、自分は必要な対応ができることを信頼する - 目的論で考える
問題を見つけたら、「原因」を探してそれを正そうとするのではなく、本来の「目的」に向かって何ができるのか、を考える
参照:目的論による問題解決
https://adpa.site/psychology/teleology/teleology/
問題を問題視せずありのままを観察し、無意識が自動運転できるようなコミュニケーションが取れれば、結果的に問題は解消されていくと信じています。
この記事へのコメントはありません。